2017年5月29日

【第一部:開拓編】業種選定のアドバイス 昭和十年代

サラリーマンの家庭に育った私が少年期を過ごした場所は、現在の金沢駅西地区だった。ここは古くから町工場の集積地帯だったため、幼いころの友人も町工場の息子たちが多かった。そんな環境からか、子どものころから自分も将来小さな工場を営みたいという強い潜在意識があった。 昭和十二年(一九三七)、父親の転勤で家族が富山市へ転居することになった。しかし、金沢の工業学校へ通学していた私だけは、当時、鉄工業を営んでいた伯母の家に世話になることになった。そのため、それまで以上に鋳造や加工の作業を直接見たり聞いたりし、また実際に手伝いさせられることも度々あった。

 

 そんなある日、私が、「自分も将来何か商売をしたいが何をしたら良いか」と、工場主である伯父に尋ねたことがある。伯父は笑いながら「まだ早い。そんなことは技能と信用ができてから考えろ」と一蹴したが、ひと言「もし物を造る商売なら飴玉屋か鋳物屋が良い。せんべい屋とか鉄工所はよせ」と言われた。前者はもし失敗しても原料が再生できて助かる。しかし、後者は失敗すれば原料も手間賃も丸損になる。すなわち起業を考える場合、失敗しても損失が小さくて済むようなことを考えよ、という示唆だった。

 

 少年時代の私は、この言葉を真正直に受け止め、将来はどちらかをやろうと胸に刻み込んだのだった。

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