2017年6月12日

【第二部:躍進編】仕事のコツ 昭和六十一〜平成三年

 昭和六十一年(一九八六)一月、我が家のシンボル的存在だった祖母が亡くなった。それをきっかけに、父に呼び戻されるかたちで、その年の八月、二十一歳でオカダ合金に入社した。今度は「身内」と「世代差」という「狭さ」になかなか慣れず、何もかもが新しかった川崎時代とのギャップに困惑する日々。私自身はさほど意識していないつもりだったが、「後継者」という視線がいつしかプレッシャーとなり、なかなか自分を表現できない日々でもあった。だからこそ仕事を早く覚え、諸先輩方に追い付き、追い越そうと現場作業に没頭した。

 

 例えば、バリ取り作業ひとつでもコツを覚えるため、自分なりの感覚を意識するようにした。必死に手足を動かして、仕上がり具合をしょっちゅう目で確認し、手直しばかりしていては思いのほか時間がかかってしまう。工具を使いながら今製品がどのように削られ、どのような形状に変化しているかを想像しながら作業する。コツは、実はただそれだけ。実際はイメージ通りにいかず、結局は修正するのだが、イメージに近づくように意識して作業を繰り返すことにより、上達が促進されるのだと信じて、ひたすら作業に没頭した。偉そうに書いたが、こんなことはモノづくりに携わる方々には当たり前の話しだろう。

 

 その後、Vプロセスや金型鋳造へと配属されたが、やはりこの「感覚」を意識することに注意して仕事を覚えていった。

 

 金型鋳造現場に配属されていたある時、当時の寺島工場長(現顧問)が、経験の浅い私に対して難易度の高い製品の鋳造計画を組んでいた。それを見かねたある先輩作業者が、「かわいそうだ」と半ば同情のような苦言を工場長に申し出ていたと耳にした。しかし当の私は、「かわいそう」どころか「うれしさ」を感じた。それだけ工場長は私の力量を認めてくれており、かつ、期待しているのだと感じ得ていたからだった。

 

オカダ合金ヒストリー

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