2017年7月13日

【第二部:躍進編】命拾い 平成元年

 私の現場体験で忘れられない「事件」がある。それは平成元年(一九八九)、Vプロセス鋳造に配属中に起きた自身の労災事故だ。

 

 当社のVプロセスは一八〇〇角サイズの金枠に砂を詰め込み、特殊フィルムで真空造型された大きな鋳型で、重量にして約三トン。これをクレーンで吊り、反転させようとした瞬間、ワイヤーが切れ、金枠の角が私の両足に落下し、救急搬送されたのだ。

 

 安全靴でガードされていたこともあり、幸い足指の骨折と両足打撲程度で済んだが、数週間の入院を余儀なくされた。この事故がきっかけで、定置型反転機(自社製)が設置され、現在のような安心して作業ができる環境が整備された。

 

 事故を起こした本人は、案外落ち着いていて「まあ、しょうがないか」とあっけらかんとしていたが、会社の方々、特に当時の寺島工場長は毎日のように見舞いに来られ、「すまん、すまん」と何度も私に謝られた。工場長の自責される姿を見て、労災事故とは起こした本人より周囲への影響がとてつもなく大きいということを思い知らされた。特に私が「二代目」という立場であることも考え合わせると、現場を預かる寺島工場長には計りしれぬご心配とご迷惑をおかけしたのだろうと今にして思う。

 

 この事故をきっかけに全社的に安全管理の意識が高まり、平成二十二年には、産業安全衛生石川大会にて事業場賞をいただいた。これは労災事故を経験した私にとって、とても感慨深いものがあった。

 

 寺島顧問は、平成二十二年十二月に役員定年となり第一線から身を引いたが、現在も顧問として在籍していただいている。長年にわたり営業(お客様)と現場(社内)と仕入(協力会社)のすべてに精通し、その人望とマネジメント力は誰もが認める存在だ。私も入社当時から大変かわいがっていただいている。時にはお互い大声で討論したりもしたが、私が本音で話せる相談相手の一人だ。入社当時の印象はまさに「仕事人間」という感じだったが、現在もその姿勢は変わることなく、幹部も含め社員に仕事の「お手本」を示し、存在感を発揮してくれている。

オカダ合金ヒストリー

お問い合わせ・ご相談はこちら

TEL:076-283-4222
/FAX:076-283-2544

受付時間:平日8:00~17:00

お問い合わせフォーム

pagetop