2017年7月13日

【第三部:技術編】鋳造アルミホイール  昭和五十七年

 昭和五十七年(一九八二)、自動車が各家庭に普及し、車のファッション化が始まっていた。ちょうどアルミホイールが出始めたころで、高岡市の商社から当社にもホイールの製作依頼があった。車にとって非常に重要な保安部品であり、当時の当社の技術では不可能に近いと判断して、お客様には「多品種少量生産の当社では非常にコストがかかり高いものになるから」とお断りした。ところが、「高いものでもスポークのデザイン次第で売れる」と言われてしまい製作を断れなくなった。

 

 当時のアルミ鋳物材料のJIS規格には強度、硬さ、鋳造製、切削性などホイールに適した規格がなかった。そこで、高岡のインゴットメーカーに依頼し、特別に成分調整(不純物セーブ、特に鉄分〇・二%以下)した材料を作ってもらい、傾斜注湯する鋳造機(ダービル鋳造機)を自分で設計、金型を作っていた鉄工所に図面を渡して製作してもらい組み立てた。当時の図面はA1判の一ミリ目の方眼紙に鉛筆手書きで、コピーを取らずに渡したので、残念ながらその図面は現場で使っているうちに行方不明となってしまった。 当時、特別に成分調整して作ったその材料が、現在のJIS規格にAC4CHで入っているのをみると鼻高々である。

 

 この特別材料を溶解し、強度、粘りを出すための溶湯処理として金属ナトリウムを用いた。劇薬購入のため薬品店にハンコを持って買いに行き、灯油の中に入れて保存、必要な量だけはさみで切り取り、トリベに入れて注湯した。金属ナトリウムの効果は抜群で、テストピースは工業試験場での強度試験に難なくパス、鋳造作業性も良好であった。

 

 その後、大量に出回った量産専門の鋳造メーカーとの価格競争に敗れて商社からの注文は途絶えたが、大変いい勉強をさせていただいたと商社に感謝している。

 

 

オカダ合金ヒストリー

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