2017年7月13日
【述懐】鋳物業一筋【取締役工場長 魚野 正人】part2
オカダ合金との出会い
私は、工業高校卒業後に日本冶金工業というステンレス専業メーカーに就職し、ステンレス鋳物製造に携わってきた。製造設備、製造プロセスも合理化され従業員も楽しみつつ生産に励んだものだ。しかし、鋳物という製品は典型的な労働集約型産業でもあり、コストの面では常に厳しい対応に迫られた。 平成十年(一九九八)に企業存続のため、金沢工場の閉鎖が決定し、翌年十一月に閉鎖された。私自身、労働組合に携わっていたため、従業員の再就職先など雇用確保に取り組みながらも、自身の雇用への不安を抱きながら過ごしていた。
「モノづくりがしたい」「地元で働きたい」「家族と一緒に暮らしたい」という気持ちでいたところ、宇ノ気町(現かほく市)でアルミ合金鋳物を製作している鋳物屋があると聞き、当時の上司から「考えてみないか」と誘いを受けた。
オカダ合金は、私にとって大変ありがたく、想いを叶えられる企業であった。ステンレスからアルミニウムに材質は変わるものの同じ色をした鋳物で、今までの経験と知識が十分に生かせることができると思った。その時は、のちに知ることになるアルミ鋳物の難しさを考える余地も無かった。
退社した翌日からオカダ合金へ入社し、当時の石丸社長はじめ従業員全員が温かく迎えてくれた。ただ、不安はあった。労働集約型の鋳物製造業であるのと、面接時の私に対する期待であった。
私に課せられた課題は、マグネシウム合金鋳物の開発と立ち上げであった。名前は知っているものの、特性は全く無知であった。
現場上がりの私が、文献・書籍を読み期待に応えようと努力を重ねた。当時県内では、軽量化を重視する分野への取り組みとして、県工業試験場の指導のもと研究を始めていた。
炉体を導入して、試作鋳造まで何とかこぎ着け、砂型鋳造では形状を作り出しアルミ合金と比較してその軽さに驚いた。
続けて社内プロセスであるVプロセスと金型鋳造への取り組みを行った。金型鋳造では引け性が強く、Vプロでは、特徴である減圧鋳型で発生する空気の流動がマグネシウム溶湯と反応して酸化燃焼し、工場中が煙で真っ白になる事態となってしまった。マグネシウム溶湯がすべて燃えて無くなってしまったのである。
幾度かチャレンジを重ねたが、社内プロセスでの実用化は課題が多く達成できなかった。しかし「社是」であるチャレンジ精神を自らに叩き込む良き機会を与えていただいたと今になって思っている。
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