2017年5月29日

【第一部:開拓編】「与えてこそ相手からいただける」 昭和六十年

 昭和六十年代に入り、景気はまずまずで受注も安定していたが、二度にわたるオイルショックに()りた業界は、省エネと効果的な公害対策を真剣に考える時代に入った。当社も溶解炉の省エネ化や作業効率化のため、試験的ながら電気炉の導入も図り、品質保証体制の確立を推進した。

 

 時代は半導体やコンピュータを中心としたエレクトロニクスの時代に入った。自動車をはじめ家電製品はもとより、工作機械等もすべてNC化(数値制御化)が進んだ。当然ながら受注先からは品質保証体制の早期実現を求められ、その対応に石丸工場長ほか幹部が奔走、富士電機やコパルの「品質管理会議」に出席して指導を受け、それを社内に浸透させた。少人数で手一杯の仕事を持っている中でのミーティングであり、これが直接生産に響いた。痛し(かゆ)しの状況だったが、取り込まなければ取引継続はもとより、新規開拓もままならないのが現実だった。

 

 昭和六十年(一九八五)七月、松下電器産業精機事業部の三名が、開発中のロボット部品の鋳造打診と工場視察を兼ねて来社された。伺えば「あるところで当社の鋳造品(金型製品)を見てきた。協力してほしい」と、数点の図面を出された。それまでは当社の方から訪問して取引開始に持っていくケースばかりだったが、今度は「天下の松下」がわざわざ大阪から来られたのだった。私はもちろん石丸工場長も本当にうれしく、すぐに取り組んだ。これが松下電器産業との出会いであり、取引のスタートだった。

 

 このことから、企業は小さくても良い、信頼される技術と相手方のニーズに応えられる良品を造れば、決して恐れることはない。問題はこちらの技術・ノウハウをいかに相手方に提供できるか。何を望んでいるかをまず知り、これに対してアドバイスを与えることがターニングポイントとなることを実感した。

 

 ほとんどの場合、設計担当者は鋳造の実務を経験せず、完成品を念頭において作図するので、設計通りの型を造れば不要な中子がいくつも入ったり、また抜勾配による難加工箇所が生じたりして、コストアップとなる場合が多い。これらの鋳造上の諸問題に対して前向きな提案を行い、無駄を省いて、相手方にコスト面でプラスになる方法を提示した。これにより信頼が深まり、長いお付き合いができることとなった。

 

 その後、松下電器産業とは、新製品の立ち上がりの際には設計担当者が来社されるか当社から出向き、設計段階で必ず打ち合わせを行うまでの間柄となった。信頼をいただいており喜ばしいかぎりである。

 

オカダ合金ヒストリー

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