2017年7月13日

【第二部:躍進編】新商品開発  平成六〜十三年

当社にとっては厳しい不況期間、いくつか新商品の開発にも取り組んだ。

 

 一つは、平成十四年(二〇〇二)、金沢城復元工事にて軒先鉛瓦(のきさきなまりがわら)の製作に携わらせていただいた際、工事終了後に前田家の家紋「梅鉢紋(うめばちもん)」をかたどって製作した観賞用の鉛瓦だ。金沢城のお披露目に合わせて限定販売した。谷本正憲知事をはじめ石川県の行政関係の方々、ご協力いただきました関係者の皆様には心より感謝申し上げます(第三部技術編参照)。

 

 もう一つは、平成十二年、得意のVプロセス鋳造にて製作(試作)したアルミ製の「立体魚拓」である。

 

 生の魚を転写造型したパネル式の魚拓で、(うろこ)の一枚一枚をも再現できる技術をアピールした、太公望にはたまらないこだわりの逸品(?)だと考え、開発に着手した。

 

 鯛(たい)やメバルなど海の魚は比較的魚皮が分厚いため鋳砂の重さに耐えられるのだが、川魚はどうしてもうまくいかない。営業相談に伺った釣具屋さんの店主には「(あゆ)(いわ)()などの川魚も造れないのか?」とやはり指摘される。魚屋から鮎を仕入れて何度も試作してみるのだが、転写工程中にダッコ(腸)が潰れてしまい「オシャカ」の連続。ようやくできたサンプル品も、アルミ地肌のままだと商品価値が低いため、色塗りが必要となった。しかしながら、色塗りすると実物の魚とどうしても相違が出て、忠実に再現できない。そこで、地元の印刷メーカーの協力を仰ぎながら、当時、世に出回り始めたデジタルカメラを活用して写真転写を試みた。鋳物というアナログ母材にデジタル技術を合わせようとしたわけだが、やはり細部をどうしても一致させることができなかった。

 

 本業の機械部品の量産鋳造と並行して試行錯誤を繰り返していたが、このままではどっちつかずで両方ともダメになってしまう、との危機感を感じ、結局、立体魚拓の商品化は諦めた。

 

 この選択は、今思うと正解だったと思う。仮に商品化が成功したとしても、うまく売れたかというと、決してそう簡単にはいかなかったのではないか。「商品三分に売り七分」。師であるランチェスター経営株式会社の竹田陽一先生がおっしゃる通り、良い商品や技術だからといってそう簡単に売れるものではないからだ。工業部品と生魚、全く異質なモノを同一工程で扱うことの難しさ、そして、本業の営業や生産活動への影響を考えるとなおさらのことだ。

 

 本業の大切さを再認識させられた、これまた良い経験だったと思っている。

 

 

オカダ合金ヒストリー

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