2017年7月13日

【第三部:技術編】自前の型設計  昭和四十三年〜

 砂型鋳造で量産する場合、モールディングマシンを使って半自動的、全自動的に造型するのだが、砂を入れる枠の大きさが限定されるため、枠に入らない大きさのものは手込めに頼るほかない。すると造型に時間がかかり、品質も安定しない。

 

 そこで、十文字の形で縦横各四十センチのものをターゲットに金型鋳造することに取りかかった。でき上がった縦型鋳造機にあわせて型の設計図を作り、シェル中子取りの型を手がけている型屋さんに型の製作を依頼するのだが、中子取りと違うポイント・コツがあるため型屋さんに支給する図面に型の材質、型の開閉方法、製品取り出し方法、機械に取り付ける方法、寸法公差、鋳造収縮割合は計算尺で計算して記入した。

 

 でき上がった型に注湯する前に断熱材、離型材を塗り、型を予熱する必要がある。適温は何度なのか探し出さねばならない試行錯誤が続く。湯の温度も同じく適温を探すことが大切である。湯の温度はアナログ表示の温度計を使ったが、型の温度を計るのにはその温度計は使えないので、マッチ棒を予熱した型の表面に押し当てて、発火するまでの時間で見当をつけた。瞬時に火が付けば大丈夫、注湯しても良いと判断した。

 

 縦型鋳造機で初めて作ったものは、二キログラム四十センチ角の十文字のアルミ製品であった。考えた通り、トラブル無くスムーズにでき上がった。この製品は以後、平成十年代後半まで毎月注文が続いた。懐かしく思い出深い製品であった。

 

 この鋳造機は以後改良を重ね、サイズの大きいもの、傾斜するものなど加えて今日に至っている。

 

 

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